GM
この世界において、救世主と呼ばれる者達は常に命の奪い合いを宿命付けられる。
GM
ノルマをこなせなかった救世主を待つ運命も、また一つ。
GM
その定めに抗うため、或いは抗いようがなかったとしても、今日明日の命を繋ぐため、殺し合いは続けられる。
GM
ここはどこにでもある、どこまでも続く荒野の最中の村の一つ。
GM
最寄りの街までは距離もあり、人気の多い場所とはとても言えないところに、今3名の救世主達が集っていた。
GM
その亡者……”ロースカツの亡者”は、その莫大な個体数でもって近隣の麦の亡者や米の亡者を食い荒らしていた。
GM
だがそれも今、たまたまこの場に集った救世主達の即興の連携によって討伐された。
ウツツ
ロースカツの亡者の元に行く前に、逃げてきた米の亡者や麦の亡者とも戦わないといけないので大変でした。
GM
勿論犠牲も消耗も大きく、あたりに散らばるのは亡者の死骸ばかりではない。
GM
もはやこの村には、村の存続が可能な数の末裔は居ないだろう。
GM
それでも、なんとか生き残る事はできた。故に末裔達は救世主達に感謝を捧げ、ロースカツでもって精一杯の歓待を行う。
GM
だが、久しぶりにありつけた食料に一息つく暇もなく。
GM
今はもう居ない村長の家で休息を取る救世主達は、一つの議題に触れざるを得なかった。
アルバトロス
(腹は死ぬほど満腹でノープロブレムッスけど、もうそろそろ一ヵ月……)
ウツツ
「こんなに肉を食べたのは久しぶりです。不幸中の幸いでしたね」
ユルス
ギットギトのベットベトになった手やら袖らをその辺の布で拭いています。
ウツツ
「ロースカツの亡者を倒すのに、結構時間がかかってしまいましたねぇ」
GM
生き残りの末裔達は、今は村の中で出立の支度をしている事だろう。
GM
もはやこの村は放棄する他ないが、最寄りの村まで1週間。
ウツツ
「そういえば、アルバトロスさんの弾は心の疵で作っているんですか?」
ウツツ
いくらでも作れる、ということは、弾切れは期待できない。
ウツツ
ユルスも、愛型の救世主とはいえ攻撃手段を持っている。
ウツツ
満身創痍の現状、どちらかをどうにかできるとは思えない。
アルバトロス
1だけ生えている才覚で、二人の救世主のことを考える。
……束になられたら敵わないだろうな。
あの眼鏡に攻撃を流されるし。
狂愛救済はちょっと怖すぎるでしょ。
ウツツ
「ここに来るまでに時間がかかり、亡者を倒すのにも時間がかかった」
アルバトロス
「お疲れッスねえ。今からやるとなると~、全方位に火が吹きそうッス」
HP1で背水が全体化するッス。
ユルス
「ホントは寝首でも掻けたならよかったんですけどね~」
ウツツ
寝首でも掻けたならよかった、ということは、一晩も猶予がないということ。
アルバトロス
「うだうだして全員亡者化……なんてのは勘弁願いたいッス」
GM
亡者との戦いの中で、互いの手の内は概ね割れてしまっている。
その実力が拮抗状態にあることも。
ウツツ
「ここは平和的に、話し合って一人に死んでもらうというのはどうでしょう?」
ウツツ
「どちらにしても、二人がかりで襲われては勝てませんしね」
GM
1人と1人であれば正々堂々と決着をつけることもあったかもしれないが、ここにいるのは3人。
ウツツ
「それなら自分は死にたくないし、生き残るのは自分に得がある方がよくありませんか?」
GM
裁判をする体力は残っていなくとも、お茶会の用意は十分。
ユルス
「確かに、フェアな方がリスクが少ないとも言えますね~」
アルバトロス
「話し合いで死ぬヤツ決める。いいじゃないッスか。理性的かつ卑怯臆病。うちのガッコでは優秀とされるッス」
ウツツ
1d6+3 優秀な私は……この場で最も才覚がある!
(1D6+3) > 4[4]+3 > 7
GM
情緒の上限(今回は3)を心の疵にそれぞれ割り振って下さい。
GM
このかけひきでは情緒が「増加するタイミング」で、「その時処理されている技能を使用しているキャラクター」が、どの心の疵に割り振られた情緒を増加させるかを宣言して頂きます。
GM
ハプニング表などによって増加する場合は、どの情緒が増加するかはランダムに決定されます。
GM
誰か一人が死亡/キャラロストした場合、その場でこのかけひきは終了します。
ウツツ
話し合いで殺す相手を決める。
本来口に出しにくい提案ではあるが、この程度の"駆け引き"を制するなど大したことではない。
ウツツ
それよりも重要なのは、どちらを生かすか。
残った方と次の村まで行動することになるだろう。それならば、十分に吟味したい。
ウツツ
「そういえば、自己紹介もまだでしたね。 改めまして、刀禰谷ウツツと申します」
ウツツ
「どうでしょう? お互いに、自分を生かすメリットを語りませんか?」
ウツツ
「まぁまぁ、呼びタメOKのラフなランチ面接という感じでも」
ウツツ
「ではアルバトロスさん、自己アピールをお願いします」
ウツツ
「ア、ですからね~。50音順でもアルファベットでも早いですよ」
アルバトロス
「苗字は禍津谷(まがつたに)なんスけどね~ 名前勝負だと先ッスねえ~」
ウツツ
「ユルスさんのフルネームによってはワンチャンありましたね」
アルバトロス
立ち上がる。
猫背で、ポケットに手をつっこんだままへらへらと笑う。
完璧な面接態度だ。
アルバトロス
「泥亜腑露(でぃあぶろ)学園、出席番号19番ぁ~ん。禍津谷アルバトロス! 万引きと恐喝、何より……」
アルバトロス
「銃でぶちぬくのもいいし、馬乗りになって殴るのもいッスね!」
アルバトロス
「学園でもそうやって優秀な成績をおさめてきたッス」
アルバトロス
「堕落の国でも同じように評価されるポイントみたいでよかったッス」
アルバトロス
「そう。殴れる、蹴れる、撃てる。これ以上にアピールすべきモノはないッスねぇっ」
ウツツ
「助かるために殺す話をしてるのに、抵抗されて殺されたらしょうがないですしね~」
ウツツ
「では次にユルスさん、自己アピールをお願いします」
ユルス
「得意なことは祈ること。
……この世界では、人を癒すこととも言い換えられますね」
ウツツ
愛型の救世主がいると、長旅の時に安心なんですよね。
ユルス
「不肖、ほら、武器らしい武器は何も持っていないでしょう?」
ユルス
「共連れにするには扱いやすい救世主と言えますね~」
ウツツ
「暴力は得意ではないとのことですが……、先の亡者戦では結構ボコボコやってましたよね?」
アルバトロス
「愛って言葉が出たとたん大抵の奴は苦しい顔をするッスねえ~」
アルバトロス
アルバトロス(あほうどり)だから鳥肌も立つもんス。
ウツツ
「免罪符いいですよね~。 金さえ積めばなんとかなるところがわかりやすくていい」
ユルス
「取り立ててのアピールポイントは、他にはございませんね」
ユルス
あとは……まあ……免罪符を売りつけられることとか……。
ウツツ
「ありがとうございます。 愛は力で金と考えると、心強い方ですね」
ウツツ
免罪符を売りつけられるのも、路銀稼ぎとして心強いし。
アルバトロス
口を半開きにして目をギョロつかせ首を傾けてアピールを待つ面接官だ。
ウツツ
立ち上がり、背筋をぴんと伸ばして微笑む。
「刀禰谷ウツツです。前職では一般職に勤めていました。本日はよろしくお願いします」
ウツツ
「まず一般的な才覚型同様、先手を取ることと、誰かを妨害することは得意です」
ウツツ
「また隙をついて攻撃することにも自信があります。状況に合わせて幅広い対応が可能です」
ウツツ
「さらに今後のビジョンとして、堕落の国のインフラ整備を目標としています」
ウツツ
「この村で我々が孤立しているのも、ひとえに堕落の国の交通状況が悪いせいです。道路を整備することで、安全に救世主も末裔も移動することができ、物流による利益も期待できます」
ウツツ
「どちらにしても、私は協力してくださる救世主を探しています。 今回私を殺さずにいてくれるのなら、長期的なお付き合いができるでしょう」
アルバトロス
「なるほど! 邪魔すること隙をつくこと、金を稼ぐこと!」
アルバトロス
「いいッスね、さっきも言ったけど卑怯なのは良いコトッス。通知表で4はカタいッス」
ウツツ
「あとは、喋ることも苦手ではないですね。 アルバトロスさん向けに言うのなら、騙すことにも自信があります」
ウツツ
「そんなところでしょうか。 皆さんお互いに質問などありませんか?」
ウツツ
同じ神でも呼び方が色々あって宗教が違ったりもするし。
ユルス
「あなたの信ずるものが神である、とかいうですね~」
アルバトロス
「よろず商売じゃなく免罪符一本でやっていくッスねぇ」
GM
①ウツツアピール>②アルバトロス誘い受け>③ウツツ誘い受け>④アルバトロス誘い受け>⑤ウツツ誘い受け>⑥ユルス誘い受け
ウツツ
「そういえば……、アルバトロスさん、暴力がお得意とのことですが」
アルバトロス
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ウツツ
「亡者戦の最中、猫に視線を奪われていたような気がしまして」
ウツツ
「例えば、これを盾にしても……、暴力を振るえますか?」
アルバトロス
「そのねこちゃん……イヤッ、ねこを一体どこで……」
アルバトロス
ねこちゃんの直前でカーブを描いてウツツの方に行く。
アルバトロス
「オラッ、くらえ!くらえ~っ! ねこたゃかわいいね~^ うりゃりゃりゃりゃ」
アルバトロス
――という言葉のとおりに振る舞ってきたはずだった。
アルバトロス
男も女も子供も老人もみんな切り裂いて撃ち抜いて食って売り払って。
アルバトロス
「人には鉛玉!犬にも兎にもトカゲにも鳥にも鉛玉!」
ウツツ
ウツツの手を逃れ、テーブルの上でお腹を出す。撫でろポーズ。
アルバトロス
かつて古代エジプト人に対してそうしてきたように、猫を盾にしたら?
その猟奇を振るいきることはできるのか?
アルバトロス
老若男女 いざ犯せ(殺せ)←コーラス(売り払え)←コーラス
さあ征かん 我ら道なき 泥亜腑露学園
ウツツ
柔らかい猫の毛を撫でる。 猫は誰の手も構わずに受け入れた。
アルバトロス
信天翁(しんてんおう)=四天王!
とかってギャグじみた命名で四天王到達を願われたのに、そうならずにここにきたのは。
ウツツ
「家族や恋人みたいな分かりやすい弱点を作っては、成功できない」
ウツツ
裁判中のアルバトロスは、悪鬼羅刹と呼んで差し支えない存在だった。
アルバトロス
頂点には届かずとも、間違いなく"成功"していた者の動き。
ウツツ
強く、恐ろしく、容赦がない。 好戦的な救世主は多々いるものの、末裔をめちゃくちゃに巻き込んで殺すその戦い方は恐ろしいものだった。
ウツツ
強大な存在を自分の観察力で屈服させたような錯覚と、同時に、底冷えのする怖気。
ウツツ
愛なんて、手に入れたくなくても転がってくるものなのに。
アルバトロス
あの日捨てられたねこちゃんに餌をあげていなければ、優秀なままだった。
ウツツ
人数分のティーカップが乗せられたテーブルの隙間に収まるような小さな命。こんなものに自分のものを差し出す必要なんてないはずなのに。
ウツツ
いつか自分に訪れるかもしれない破滅の予感に、小さく身震いした。
ユルス
無策に、敢えて不利な状況を作るような人物ではないだろうと。
アルバトロス
「人間も亡者も犬も鳥も兎も亀も、ぜーんぜん可愛くないッスけど」
ウツツ
兎の耳の末裔も、ねずみの耳の末裔も撃ち殺していたのに。
アルバトロス
「もしあの一瞬、オレが天才的な反射神経を発揮できず」
アルバトロス
「オレたぶん話し合いも放棄してこれをブチかましてたッス」
UZIでテーブルをどつく。
アルバトロス
賢しい者がうまく扱えば、その愛で翻弄し、この男を奴隷にできるだろう。
GM
3 なんだか気持ちが昂ぶってきた。自身の情緒+1。
ウツツ
テーブルの上の小さくやわらかい生き物は、人間の腕の変化に注意を払わない。
アルバトロス
それでも右手だけは人の手のまま、ねこちゃんの腹を撫でる。
アルバトロス
99%の悪と、1%の愛でできた怪物が姿を現し始めている。
アルバトロス
しかしその1%が、疵を抱えた者らによっては何よりも恐ろしく見えるだろう。
ウツツ
ただの、なんて、他人から言えるものはいくらでもある。
アルバトロス
愛で世界が救われるなら、こんな姿にはならないはずだ。
神がこの世におられるのなら、こんな姿には。
ユルス
底冷えするような心持ちで、アルバトロスを見つめている。
ユルス
この救世主は疲弊しても尚。僅かに余力を残していた。
ユルス
どうして人の身で、その罪を減じることができようか。
アルバトロス
転落のきっかけは、まだテーブルの上に転がったまま。
ウツツ
顔を上げた黒猫は、自分を撫でようとする亡者を見た。
ウツツ
その手から逃れるように、テーブルの上から走り去る。
ユルス
その力で、首を締めあげて、拘束をして、それでいて尚。
ウツツ
猫よりも小さなナイフを構える。 大怪我をさせるほどの殺傷力はないが、これで十分。
GM
誰か1人を犠牲にするための話し合いで、間違いなく1人が犠牲になった。
ウツツ
──どんなに成功しても、愛を知らないままの人生は寂しいものよ。
GM
この後に2人はこの村を後にし、また旅を続けるだろう。